
データ主権とは?
データ主権は、複数の国境を越えてデータを処理する企業にとって、重大な法的影響を及ぼします。 しかし、それは一体何なのでしょうか? その仕組みとは?どうすれば達成できるのでしょうか?
データ主権とは何か、そしてそれが組織にとって何を意味するのか、知っておくべきすべての情報をご紹介します。
データ主権とは?
データ主権とは、特定の国で生成または収集されたデータが、その国の法律の適用を受けるという原則を指します。 これには、個人情報、財務記録、知的財産など、ほぼすべての種類のデータが含まれます。
この概念は、さまざまなプライバシー規制を通じて運用されます。 データが作成された管轄区域内に物理的に留まることを保証することを目的とする規制もあります。 また、ある場所で生成され、別の場所に保存されたデータにも同様の法的保護が適用されることを保証しようとする規制もあります。
データ主権はデータプライバシーとセキュリティにどのような影響を与えますか?
注目すべきは、データ主権がデータプライバシーと本質的に結びついていることです。 なぜでしょうか データが存在する国およびユーザが市民である国の管轄規則によって管理されることを保証するためです。 これは、組織が現地のデータプライバシー法を順守しなければならないことを意味しており、以下のような制限が含まれます。
- データ収集
- データ処理
- データ共有
- データストレージ
- データアクセス
- データガバナンス
主権はデータセキュリティにも大きな影響を及ぼします。 プライバシー法は通常、データ保護を重視し、暗号化、アクセス制御、継続的なモニタリングなど、堅牢なセキュリティ対策を義務付けています。 つまり、海外の組織は、法的管轄区域内で発生したデータを扱う場合、現地の規制対象となります。
例: EU一般データ保護規則(GDPR)
EU一般データ保護規則は、多くの場合、世界で最も包括的なデータプライバシー法と考えられています。 欧州連合(EU)域内で個人のデータを処理する事業体は、その組織がどこに拠点を置いているかにかかわらず、GDPRを順守しなければなりません。
例えば、米国に拠点を置き、フランスで事業を展開する多国籍クラウドサービスプロバイダーがいるとします。 GDPRのデータ主権要件によると、この企業は特に以下の規則を順守する必要があります。
- データ収集: クラウドプロバイダーは、EU市民の個人データを収集または処理する前に、明示的な同意を得る必要があります。
- データストレージ: 企業は市民の個人情報をEU域内のデータセンターに保管する必要があります。
- データアクセス: データ漏えいのリスクを軽減するために、厳格なアクセス制御の仕組みを導入する必要があります。 同様に、市民は自身のデータへのアクセス、誤った情報の修正、個人情報の削除要求など、プライバシー権を行使できるようにする必要があります。
これらの法律に加えて、該当のクラウドサービスプロバイダーは、個人情報を処理する他のすべての場所でも規制の対象となります。
例: カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)
CCPAとその後継法であるカリフォルニア州プライバシー権利法(CPRA)は、米国で最も重要とされる2つのデータ主権関連法ひとつです。 一般的には、カリフォルニア州の居住者から個人データを収集し、特定の収益基準を満たす企業に適用されます。
フランスに拠点を置く電子商取引企業が、カリフォルニアの消費者にサービスを提供しているとします。 CCPAのデータプライバシー要件に基づき、この企業は以下のような規制を順守する必要があります。
- データ収集: 企業は、データを収集する前または収集時に、その収集する個人情報のカテゴリーについて居住者に通知する必要があります。
- データ共有: また、企業は、消費者がデータの販売を拒否できるよう、自身のウェブサイト上に明確かつ分かりやすいリンクを設ける必要があります。
- データアクセス: 企業は、過去12ヶ月間に収集されたすべての個人情報に居住者がアクセスできるようにする必要があります。
注目すべき点として、このフランス企業も、EU市民の個人データを処理している場合、GDPRの対象となることです。 このため、コンプライアンス遵守要件が複雑に絡み合い、しばしば矛盾することになります。
データ主権、データローカライゼーション、データレジデンシーの比較
データローカリゼーションとデータレジデンシーは、データ主権という包括的な枠組みの中にある関連した概念ですが、ぞれぞれ異なるものです。 主な違いを説明します。
- データ主権: データが収集された国の法律に従うことを定めた法的原則です。 データ主権は、管轄権の管理と地域のプライバシー規制の順守に重点を置いています。
- データローカリゼーション: 組織がデータの発生元となる地域の物理的な境界内にデータを保管する運用方法です。 これは、データ主権に関する法律の施行と順守の維持に役立ちます。 例えば、データローカリゼーションは、銀行口座の詳細や医療記録などの機密情報が現地の規制によって保護されていることを保証するためによく使用されます。
- データレジデンシー: データが保存されている正確な物理的所在地を指し、一般的にはデータセンターのインフラストラクチャに関係しています。 組織は、規制順守、遅延時間、災害復旧のニーズに基づいてデータレジデンシーのオプションを決定します。 ある国にあるデータセンターに情報を保管することは、他の場所に保管するよりも、物流面や法的な面で合理的な場合があります。
要するに、データ主権は関連する両方の概念を包含しています。 しかし、組織はデータの流れを管理し、規制に対応するにあたって、この3項目すべてを考慮する必要があります。
データ主権が重要な理由
データ主権は国家安全保障にとって重要です。政府が機密データの保存と処理を規制し、特定の種類のデータの国境を越えた移転を制限できるようにするからです。 これにより、セキュリティ侵害や外国企業による不正アクセスを防ぐことができます。
同時に、消費者は組織が自身の個人データをどのように扱うかについて、ますます意識を高めています。 2023年の調査によると、世界で68%の人々が、オンラインのプライバシーについて、やや懸念している、あるいは非常に懸念していると回答しました。 懸念が高まる中、企業がデータガバナンスを透明かつ適切に実施する必要性がこれまで以上に高まっています。特に、新たな規制により、規制順守の重要性が高まっています。
適切なデータ主権がもたらすメリット
データ主権の要件を理解し、適切に順守している組織は、最終的にさまざまな点でメリットを得ることができます。
- より強力なコンプライアンス: 規制に違反した場合、多額の罰金や刑事罰など、重大な結果を招く可能性があります。 例えばGDPRに違反した場合、最大2,000万ユーロまたは世界の売上高の4%のいずれか高い方の罰金が科される可能性があります。 データ主権は効果的なデータガバナンスを促し、それによって法的リスクを最小限に抑えるのに役立ちます。
- より良いデータセキュリティ: データ主権によって、企業は機密データを管理下に置き、不正アクセスから安全に保護することができるようになります。 ローカルでのデータ保管の取り組みにより、監視体制が強化され、アクセス管理や暗号化、その他のセキュリティ対策が向上します。 さらに、特定の管轄区域内にリソースを集中させることで、インシデント対応プロセスを迅速に行い、適用される法的枠組みに適合させることができます。
- 顧客の信頼向上: 顧客データ保護に対する取り組みを示すことで、ターゲットとなる顧客層の信頼構築につながります。 これにより、顧客との関係が強化されるだけでなく、セキュリティ体制に乏しい企業に対する競争力も獲得できます。
- より高い事業の継続性: データレジデンシーのような原則は、災害や混乱が発生しても企業が機密データにアクセスできることを保証します。 情報を特定の管轄区域内に留めておくことで、主要なサービスをオンラインに戻し、復旧を完了させることが容易になります。
データ主権の課題
データ主権を確立することは、言うほど簡単ではありません。 その仮定で、以下のような困難な障害に直面することがあるかもしれません。
- 複雑な規制
複数の管轄区域に事業を拡大するにつれて、データ主権は飛躍的に難しくなっていきます。 多国籍企業の場合、各事業拠点の法律の共通点(交差)、重複点(重なり)、相違点(分岐)を理解しておく必要があります。
さらに、特にデータが国境を越えて移動する場合、一部の規制が他の規制と抵触する可能性があります。 これにより法的な不確実性や混乱が生じ、コンプライアンス違反のリスクが高まる可能性があります。
問題を複雑にしているのは、データプライバシー規制が常に変化しているからです。 企業は、最新の動向と変化を常に把握し、それに応じて実務を適応させる必要があります。 - クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングのボーダーレスな性質は、多国籍企業にとって問題を引き起こす可能性があります。 クラウドサービスは、規制の異なる複数の国に分散している場合が多いです。 例えば、法域によっては、データの処理や保存が可能な場所を制限することで、クラウドプロバイダーの選択肢が制限される場合があります。 - インフラストラクチャの費用
データ主権には高いコストがかかることがあります。 例えば、他国のデータローカリゼーション要件に対応するために、新たなデータセンターを設立し、維持する必要があるとします。 また、新たな基準となる保護対策により、データセキュリティ体制を強化しなければならない場合もあります。
最終的には、インフラストラクチャ、メンテナンス、コンプライアンスにかかる費用が積み重なり、高額に膨れ上がる可能性があります。 小規模な組織にとっては、こうした要素は法外に高額となる可能性があります。
データ主権のベストプラクティス
これらの課題を乗り越えられるか不安ですか? ここでは、データ主権のジャーニーを順調に始めるためにできるステップをご紹介します。
データ監査の実施
自身のデータがどこで収集、保存、処理、送信されているかを知ることは、コンプライアンスを維持するうえで不可欠です。 結局、どの規制が自社に適用されるのかを理解していなければ、規制を遵守することはできません。 監査を実施し、国境を越えたデータの流れをマッピングして、関連する法域を特定します。
コンプライアンスの状況を把握する
また、事業を展開する各国のデータプライバシー法を徹底的に調査し、正確に理解することも重要です。 これには、データの収集、保存、処理などに関する具体的な要件を理解することも含まれます。
法律の専門家に相談したり、国際的なデータ保護法に精通したコンプライアンスオフィサーを雇ったりすることで、こうした複雑な問題に対処することができます。 この基礎知識は、現地の法的枠組みに沿った効果的なデータ管理戦略を策定するうえで極めて重要です。
現地のデータセンターの利用
データセンターの運用には費用がかかるかもしれませんが、データローカリゼーションの要件を準拠するうえで役立ちます。 これによって、情報が地元当局の管轄内に留まることが確保されます。
多国籍企業の場合、複数の地域にデータセンターを設置し、ハイブリッドクラウドのアプローチで調整することで、現地の規制順守と運用効率のバランスを取ることができる可能性があります。
データガバナンスポリシーの導入
データ主権を確保するためには、包括的なデータガバナンスポリシーの策定と実施が不可欠です。 これらのポリシーには、データ分類、アクセス制御、データの取り扱い手順、およびコンプライアンスのモニタリングを含む、データ管理の手順が概説されている必要があります。
データ保護とコンプライアンスに明確な責任を課す監視の枠組みを確立します。 規制やビジネスのニーズの変化に対応するため、これらのポリシーを定期的に見直し、更新し、すべての側面においてコンプライアンスと安全性を確保します。
適切なソリューションの活用
高度なデータセキュリティ機能は、データ主権要件をより効果的に満たすのに役立ちます。 堅牢なIDおよびアクセス管理(IAM)プラットフォームは、多要素認証(MFA)やリスクベースの適応認証など、複数の制御メカニズムを提供し、データアクセスを許可された担当者のみに制限することができます。
Entrustでデータ主権を達成する
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データ主権ソリューション
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仮想化環境およびコンテナ環境における自動化されたワークロードのセキュリティポリシーの実施と順守により、プライベートクラウドの展開における設定ミスから機密データを保護します
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当社の暗号鍵ライフサイクル管理ソリューションは、データ主権規制への準拠を可能にする分散型保管庫とともに、組織全体で一元化された可視性と監査を提供します。